
行政書士として開業したい。
あるいは、すでに開業しているけれど、これから伸びる専門分野を作りたい。
そう考えたときに、候補の一つとして出てくるのが、ドローン許可申請です。
一方で、
「ドローンに詳しくないと難しいのではないか」
「今から始めても遅いのではないか」
「包括申請だけでは単価が安いのではないか」
と感じている方も多いのではないでしょうか。
実際、ドローン業務は、ただ流行っているから始めればよいというものではありません。
航空法の理解も必要ですし、飛行内容によってはリスク判断も必要になります。
ただ、先に私の考えをお伝えすると、ドローン許可申請は、行政書士にとって入口業務としては十分に可能性のある分野だと思います。
ただし、単に「包括申請を代行します」というだけで長く安定して稼げるかというと、そこは少し慎重に見る必要があります。
これから重要になるのは、申請書を作ることだけではなく、
「この飛行はどう進めるべきか」
「どの許可が必要か」
「他の法令との調整は必要か」
という判断や設計の部分です。
この記事では、ドローン許可申請の需要、単価、リピート性、そしてAI時代に行政書士として価値を出す方法について解説します。
ドローン許可・承認件数は大きく伸びている
まず、需要の面から見ていきます。
国土交通省のデータを見ると、ドローンの飛行に関する許可・承認件数は大きく増えています。

平成28年度は13,535件だった申請件数が、令和6年度には93,879件まで増えています。
単純に比較すると、約6.9倍です。
令和7年度も91,975件と高い水準で推移しており、一時的なブームというより、ドローンの事業利用がかなり定着してきたと見ることができます。
ここで大事なのは、件数が伸びていることそのものだけではありません。
高い水準で推移しているという点です。
行政書士業務として考えるなら、単発の流行よりも、継続的に相談が発生する市場かどうかが重要です。
ドローン許可申請は、更新、機体追加、操縦者追加、飛行内容の変更などがあるため、一度きりで終わりにくい業務になり得ます。
ドローン市場そのものも拡大している
ドローンジャーナルの市場規模データを見ても、ドローン市場は今後さらに拡大していくことが予測されています。
特に、空撮だけでなく、点検、土木・建築、農業、防犯、物流、ドローンショーなど、用途が広がっている点が特徴です。

以前は、ドローンというと空撮のイメージが強かったと思います。
しかし、今はそれだけではありません。
インフラ点検、建設現場の測量、農薬散布、災害時の状況確認、イベント撮影、警備、防犯、物流の実証など、使われる場面が広がっています。
つまり、ドローンは「映像を撮る道具」から、現場の課題を解決する業務ツールになってきています。
用途が増えれば、当然ながら飛行ルールや許可申請に関する相談も増えます。
ここに行政書士が関わる余地があります。
行政書士が扱いやすい入口は包括申請
行政書士がドローン業務を始める場合、まず入口になりやすいのは飛行許可申請(包括申請)です。
報酬相場としては、飛行許可申請の包括申請で2万円~3万円程度が一つの目安になると思います。
もちろん、地域や事務所の方針、サポート範囲によって変わります。
包括申請は、初めてドローン業務を扱う行政書士にとって、比較的取り組みやすい入口です。
制度を学び、DIPSの操作に慣れ、依頼者から飛行内容を聞き取る経験を積むには良い業務だと思います。
ただし、ここで注意したいのは、包括申請だけを売りにすると価格競争になりやすいという点です。
定型的な部分が多い業務は、将来的にAIや低価格サービスの影響を受けやすくなります。
高単価になりやすいのは個別申請や難易度の高い案件
ドローン許可申請で単価を上げやすいのは、個別申請や難易度の高い案件です。
たとえば、次のようなケースです。
- イベント上空で飛行する場合
- 空港周辺で飛行する場合
- 150メートル以上の高さで飛行する場合
- レベル3.5飛行を行う場合
- 道路使用許可や公園使用許可など、他法令との調整が必要な場合
このような案件では、単に申請書を作るだけではなく、飛行計画の確認、リスク整理、関係機関との調整、他法令の確認などが必要になります。
個別申請では5万円を超える案件もありますし、レベル3.5飛行のような難易度の高い案件では10万円を超えることもあります。
ここで行政書士の価値が出るのは、依頼者が自分で判断しにくい部分です。
「この飛行は可能なのか」
「どの手続きが必要なのか」
「許可申請以外に確認すべきことはないのか」
こうした相談に答えられるようになると、単なる代行ではなく、専門家として選ばれやすくなります。
ドローン業務はリピート性もある
ドローン許可申請の魅力は、リピート性があることです。
原則1年ごとに更新手続きがあり、機体を追加したり、操縦者を追加したりする場面もあります。
機体追加や操縦者追加は、1件あたり5,000円程度の小さな業務になることもあります。
しかし、継続的にドローンを使う事業者とつながることができれば、小さな依頼が積み重なります。
さらに、次のような相談も発生します。
- この場所で飛ばせるか判断してほしい
- イベントでドローンを飛ばしたい
- 飛行計画を確認してほしい
- 法改正に対応できているか見てほしい
- 社内のドローン運用ルールを整えたい
こうした相談が増えてくると、月額1万円から3万円程度の顧問契約に発展する可能性もあります。
もちろん、すべての依頼者の顧問になれるわけではありません。
ただ、継続的にドローンを使う法人であれば、スポット申請だけでなく、相談先としての行政書士を求める場面は十分にあります。
初心者行政書士にとっての始めやすさ
ドローン業務は、初心者にとっても比較的検討しやすい分野だと思います。
もちろん、ドローンそのものへの理解は必要です。
飛行ルール、機体登録、操縦者、飛行場所、飛行方法、リスクなど、学ぶべきことはあります。
ただし、最初からドローンのプロである必要はありません。
むしろ行政書士として大事なのは、制度を正しく理解し、依頼者の飛行内容を整理する力です。
建設業、農業、測量業、イベント業、映像制作会社など、他業種との接点を作りやすいのも魅力です。
AI時代に注意すべきこと
ここからは、少し現実的な話をします。
ドローン許可申請は有望ですが、簡単に儲かる業務ではありません。
まず、1件あたりの単価自体は安めなので、件数をこなす必要があります。
また、特に、包括申請だけを前面に出すやり方は、将来的に厳しくなる可能性があります。
なぜなら、定型的な申請はAIやシステムで効率化されやすいからです。
依頼者が「安く申請してくれる人」を探すようになると、価格競争になりやすくなります。
これはドローン業務に限った話ではありません。
行政書士業務全体に言えることだと思います。
書類作成だけの価値は、今後少しずつ下がっていく可能性があります。
だからこそ、行政書士は「書類を作る人」から、「判断と設計を支援する人」へ移っていく必要があります。
これから残りやすい行政書士の価値
AI時代でも残りやすいのは、複数の制度や現場事情を踏まえた判断です。
たとえば、イベント上空飛行、レベル3.5やレベル4、空港周辺、道路使用許可、公園使用許可などが絡む案件です。
こうした案件では、依頼者は単に書類を作ってほしいのではありません。
「この案件をどう進めればよいのか」
「どこにリスクがあるのか」
「どの順番で手続きを進めるべきか」
を知りたいのです。
AIは調査や書類作成を補助してくれると思います。
しかし、最終的に依頼者が求めるのは、責任を持って判断してくれる専門家です。
ここに行政書士の価値が残ります。
これから始めるなら、どう進めるべきか
これからドローン業務を始めるなら、いきなり高難度案件を狙う必要はありません。
まずは、航空法の基本、DIPSの操作、包括申請、機体登録、更新、機体追加、操縦者追加あたりから学ぶのが現実的です。
そのうえで、個別申請や他法令との調整を少しずつ広げていくとよいと思います。
流れとしては、次のようなイメージです。
- 航空法とドローン制度の基本を学ぶ
- DIPSでの申請手続きに慣れる
- 包括申請を入口業務として扱う
- 機体登録、更新、追加変更をセットで案内する
- 個別申請や他法令調整を少しずつ学ぶ
- 相談顧問につながるメニューを作る
大切なのは、最初から完璧を目指しすぎないことです。
学びながら、扱える範囲を少しずつ広げていく姿勢が大事です。
まとめ:ドローン許可申請は、専門分野として検討する価値がある
ドローン許可申請は、行政書士にとって十分に検討する価値のある業務だと思います。
許可・承認件数は大きく伸びており、市場規模も拡大が見込まれています。
包括申請は入口として始めやすく、個別申請や高難度案件では単価を上げやすい可能性があります。
また、更新、機体追加、操縦者追加、飛行計画の相談など、リピート性もあります。
ただし、包括申請だけを売りにすると、将来的には価格競争に巻き込まれるかもしれません。
これから行政書士が目指すべきなのは、単なる申請代行ではなく、依頼者のドローン活用を安全かつ適法に進めるための相談役です。
ドローン業務は、まだまだ発展していく分野です。
これから専門分野を作りたい行政書士にとって、学んでおく価値は十分にあると思います。




