
「小さな事務所でやっている自分って、かっこ悪いのかな…?」
「もっと大きな事務所にしないと…!売上も、人も、もっと…!」
そんな風に思ったことはありませんか?
「会社・事務所は、どんどん年商を伸ばして、社員を増やして、大きなオフィスを借りるのが王道」
世間では、そう思われている節があると感じます。
もちろんそれ自体は素晴らしい夢です。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
拡大路線は、あなたやお客様の幸せにつながるのでしょうか?
大きくしないと、満足できる収入や充実感は得られないのでしょうか?
士業専門Web集客コンサルタントの、大林亨輔(おおばやし こうすけ)です。
今日はそんな「小さな事務所=かっこ悪いのでは?」という疑問について、私自身の経験や考え方を交えながらお話ししたいと思います。
小さな事務所だからこそ持てる強みもありますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
事務所の規模=優劣ではない(士業事務所は平均5人未満)
「小さな事務所のままで大丈夫なのかな?」
そう不安に思う方も多いかもしれません。
けれど実際には、士業の事務所は小規模が“当たり前”なんです。
ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』のデータによると、士業事務所の平均人数は どの業種も5人未満。
法律事務所で平均4.3人、司法書士事務所で約2.9人、行政書士事務所に至っては平均2人弱という数字です。
少し古いデータではありますが、この傾向は今も大きく変わっていません。
私自身も士業の先生方をサポートする中で実感しますが、ほとんどの事務所は1~5人規模ですし、それがむしろ標準的な形です。
つまり「小さいから格好悪い」というのは思い込みに過ぎません。
事務所の規模は優劣を測る基準ではなく、それぞれのスタイルや価値観に合った“選択”でしかないのです。
私の経験:拡大を目指して苦しんだ話
私自身も、かつては「もっと大きな会社にしたい」と考えていました。
社員を増やし、大きな売上目標を掲げて…それが“成長”だと思っていたんです。
最初のうちは「前に進んでいる」と実感できて、手応えもありました。
けれど、だんだんとその目標が“ノルマ”に変わっていきました。
社員を雇えば、生活を守る責任が生まれます。
もちろん当たり前のことですが、その重圧が「売上を上げなければ」という義務感となってのしかかってきたのです。
気づけば、お客様に提案をしている時も「これは本当にお客様のためなのか? それとも自分たちの売上を伸ばすためなのか?」と心の中で揺れるようになっていました。
当たり前ですが、お客様は私の会社の売上目標なんて全く気にしていません。
しかし、私の頭の中は“自分の会社の売上のため”でいっぱいになっていたのです。
その結果、「誰のために仕事をしているのか」がわからなくなり、強いモヤモヤを抱えるようになりました。
今振り返れば、それは“事務所を大きくすることで、自分の価値を証明したい”という、私自身のエゴに引っ張られていたのだと思います。
獣にお金を食い尽くされる…
事務所を拡大しようとすればするほど、売上目標はどんどん膨らみます。
気づけば「もっと稼がなければ、この規模を維持できない」という感覚に支配されていました。
その状態はまるで、大きくなった“獣”に必死で餌をやり続けているようなものでした。
売上を伸ばすこと自体が目的化してしまい、本来の「お客様の課題解決」という軸を見失いかけていたのです。
この感覚を的確に表現してくれているのが、私が愛読している『ステイ・スモール』という本です。
この本の中では「どんどん拡大していく会社は、獣のような存在になりうる」と語られています。
規模を追えば追うほど、その獣はお金を食い荒らし、経営者はその餌を与えるために働き続ける羽目になる。
自分のためでも、お客様のためでもなく、獣(事務所・会社)のために働くことになる。
そんな悪循環に陥ってしまう、と。
私もまさにその状態に陥っていました。
獣を養うために動き回っているうちに、本当にやりたいことや、本来大切にすべきお客様への価値提供を二の次にしてしまいそうでした。
だからこそ、私は一度立ち止まって考えたのです。
「獣に餌を与えるための経営」ではなく、「自分が好きで、価値を感じられる仕事に集中する経営」にシフトしなければならない、と。
小さな事務所は、「大きくなる前の発展途上」ではない
そうやって苦しんでいたときに出会ったのが、ダーウィンの「進化論」でした。
(理科の教科書などで見たことがある人もいるかもしれませんね)
「進化」という言葉を聞くと、多くの人は“強くなる”“大きくなる”というイメージを持つのではないでしょうか。
例えばポケモンのように、進化すれば体は大きく、能力も高くなる。
(ヒトカゲ⇒リザード⇒リザードン、のような)
会社も同じように、大きくなることが「正しい進化」だと考えてしまいがちです。
けれど、本来の進化は、そうではありません。
進化は一直線の階段ではなく、枝分かれしていくものなのです。
猿は人間になるために存在しているわけではなく、猿は猿として進化の最前線にいます。
猿は「人間になる前の発展途上」ではなく、猿の道を進化しているのです。
そして人間もまた、人間としての進化の最前線にいる。
どちらが優れているわけではなく、それぞれが環境に適応した結果なのです。
会社や事務所も同じだと思います。
大企業は大企業としての進化を遂げた存在であって、中小企業や個人事務所がそこを目指さなければならない理由はありません。
それぞれが違う生き物であり、それぞれが自分の環境に合わせて進化の最前線に立っているのです。
つまり、小さな事務所も“大企業になる発展途上”ではなく、小さな事務所としてすでに完成形の一つ。
あなたの事務所も、あなたの事務所として「最前線」を進んでいるのです。
規模にかかわらず、独立開業してやっているというだけで、本当にすごいことなのです。
「もっと!もっと!」の弊害
規模を大きくすることを追いかけていた頃の私は、「もっと!もっと!」と常に上を目指していました。
でも、その先には終わりがありません。
達成しても、さらに次の目標が生まれて、また追いかける…。
結局、心は満たされないままでした。
ちなみに仏教(仏典:ダンマパダ)には、こんな言葉があります。
たとえ貨幣の雨を降らすとも、欲望の満たされることはない。
当時の私も、まさにこの状態でした。
そんな時に思い出したのが、東洋哲学にある「足るを知る」という言葉です。
この言葉だけ聞くと「我慢しなさい」「今の状況で満足しなさい」といった意味に受け止められがちだと思います。
しかし、私が思う「足るを知る」は少し違います。
これは「自分が、何をもってして満たされるのか?を知りなさい」という意味だと思うのです。
例えば、私は情報発信をしている時間が一番好きです。
YouTubeやブログ、Podcastで考えをシェアしていると、とても充実感があります。
(今こうして、このブログを書いている時間も、とても充たされた感覚があります)
大好きな仕事ができる環境さえあれば、社員数や売上高のような“外から見える数字”に振り回される必要はありません。
「好きこそものの上手なれ」という言葉もあるように、数字はあとから勝手についてきます。
(綺麗事だと言われるかもしれませんが、私が実際にそうです)
つまり大事なのは「規模」ではなく、「自分が何をしている時に満たされるのか」を知り、それに集中できる働き方を選ぶこと。
これこそが、本当の意味での“足るを知る”であり、幸福度の高い働き方につながるのだと思います。
小さな事務所だからこその3つの強み
ここまで「大きさ=優劣ではない」という話をしてきましたが、むしろ小さな事務所だからこそ発揮できる強みがあると私は思います。
私が考える大きな強みは3つです。
1つ目は、スピード
今は変化の早い時代です。
例えば行政書士で言えば、数年前にはなかった民泊やドローンに関する許可など、新たな許認可が次々と登場しています。
逆に、廃れていく分野もあるでしょう。
小さな事務所なら、「昨日までは建設業許可をやっていたけど、今日からドローン許可も扱おう」のように、即断即決で動けます。
大きな組織では調整や稟議が必要ですが、個人や少人数の事務所なら柔軟に対応できる。
ちなみにダーウィンは、こんなふうに言っています。
最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。
唯一、生き残る者は、「変化できる者」である。
つまり、世の中というのは「弱肉強食」ではなく、「適者生存」なのです。
環境に適応してうまく変化していくものが、生き残っていく。
(現に、巨大化しすぎて、環境に適応できなかった恐竜は絶滅してしまいましたよね)
この点で、小さな事務所はとても有利です。
2つ目は、「個性」を武器にできること
士業は「人そのもの」が商品です。
規模が大きくなると代表者が前に出にくくなり、あなたの個性は埋もれてしまいます。
しかし小規模なら、代表者自身が前に立って発信できる。
私自身もYouTubeで顔を出して発信することで、「大林さん(の会社)に相談したい」と思っていただけるケースが多くあります。
個性は、小さな事務所の最大の武器なのです。
3つ目は、好きな仕事に集中できること
組織が大きくなるほど、管理や人事といった、「本業以外の仕事(お客様への価値提供以外の仕事)」が増えていきます。
その分、経営者が一番やりたい仕事に割ける時間は減っていく。
小さな事務所であれば、これらに追われることなく、自分が一番情熱を注げる分野に集中できます。
私にとっては「情報発信」がそれに当たりますし、楽しんでやれているからこそ継続もできています。
論語でも、こんなふうに言われています。
天才は努力する者に勝てず、努力する者は楽しむ者には勝てない。
好きな仕事をしている人が最強。
私はそう思います。
この「スピード」「個性」「好きな仕事に集中できる環境」。
これら3つは大きな組織にはなかなか持てない、小さな事務所だからこその強みだと思います。
小さな事務所は「恥」ではなく「誇り」
ここまでお伝えしてきたように、事務所を大きくすること自体が悪いわけではありません。
社員を増やして組織を広げていくことにやりがいや幸せを感じる人もいます。
それも一つの選択肢です。
ただし注意したいのは、「見栄」や「エゴ」で拡大を追いかけると、待っているのは苦しみだということです。
会社を維持するために働き続け、まるで獣に餌を与えるような感覚に陥ってしまう…。
そんな経営は、自分もお客様も幸せにできません。
しかも今は、人を社員として抱え込まなくても、クラウドソーシングや業務委託を通じて、プロフェッショナルと柔軟に協力できる時代です。
大きな組織をつくるよりも、小さなチームを必要に応じて組み、互いの得意分野(好きな仕事)をかけ合わせる方が、むしろ良い成果を出せることも多いのです。
だからこそ、「拡大する=雇用を増やす」という発想に縛られる必要は、まったくありません。
「小さな事務所=格好悪い」というのは誤解です。
むしろ小さな規模だからこそ、変化にスピーディーに対応できるし、個性を打ち出せるし、自分の好きな仕事に集中できるという強みがあります。
これは誇るべき価値です。
結局のところ大切なのは、「自分はどの形で働くのが一番幸せなのか」をしっかり見極めること。
あなたにとっての“最適なサイズ”はどこでしょうか?
ぜひ一度、立ち止まって考えてみてください。
好きな仕事をしていれば、自ずと「適正サイズ」になる
フワッとした考え方かもしれませんが、なんとなく「うまく導かれている」ような、そんな気がするのです。
もし「小さくても強い事務所のあり方」をもっと深く知りたい方は、私が愛読している本『ステイ・スモール』の紹介記事もぜひ読んでみてください。
>> 小さな会社が持つ強みと戦い方をまとめた『ステイ・スモール』の記事はこちら
小さな事務所の価値を、さらに深く学べるはずです。