いただいたご質問
詳しく伝えすぎると、ご本人がそのまま自力で申請してしまう可能性があります。
一方で、抽象的な説明だけでは案件の難しさや専門家へ依頼する価値が伝わりません。
無料相談と有料サービスの線引きは、どのように考えればよいでしょうか。
ご相談者様の概要
| 士業名 | 行政書士・社会保険労務士 |
|---|---|
| 地域 | 大阪府 |
| 状況 | ビザ申請を専門分野としてホームページ集客を実施 |
| ご相談の背景 | ビザ申請の無料相談で、許可の見込みや審査上の論点を説明した後、相談者が自力で申請していると思われるケースがありました。専門性を伝えながら、個別の立証方法や書類作成ノウハウをどこまで開示するべきか悩まれていました。 |
回答:結論からお伝えします
無料相談では、「審査上の論点や考え方」までは伝え、「具体的な書類の選定や立証方法」は受任後に提供するという線引きがおすすめです。
相談者に専門性を感じてもらうためには、単に「許可の可能性があります」と伝えるだけでは不十分です。
一方で、どの資料を集め、どのような順番で説明し、申請理由書をどう組み立てるかまで詳しく伝えると、専門家のノウハウを無償で提供することになりかねません。
無料相談では問題点を整理し、解決の方向性を示します。
個別具体的な解決策の設計と実行は、受任後の業務として分けるとよいでしょう。
無料相談の線引きを明確にするポイント
1.無料相談では「診断」と「論点整理」を行う
無料相談で伝える内容としては、次の範囲が考えられます。
- 申請において問題になりそうな事実
- 審査で確認される可能性が高いポイント
- 許可を得るために説明が必要な事項
- 一般的に考えられるリスク
- 専門家へ依頼した場合の支援内容
例えば、長期間の国外滞在がある永住申請であれば、「継続的に日本へ居住していると評価されるかが論点になる」と説明できます。
さらに、「国外滞在の理由や、日本に生活の本拠があることを説明する必要がある」と方向性を示すところまでは、無料相談の範囲に含めてもよいでしょう。
ただし、具体的にどの証拠を提出し、どの事実と結び付けて主張するかまで説明すると、ノウハウの切り売りになりやすくなります。
2.「考え方」と「作業方法」を分ける
無料相談と受任後の業務は、次のように分けると分かりやすくなります。
- 無料相談:問題点、審査の視点、解決の方向性を伝える
- 受任後:必要書類を選定し、証拠を整理して、申請全体を組み立てる
相談者には、次のように伝えると自然です。
「今回の申請では、国外滞在中も生活の本拠が日本にあったことを、客観的な資料で説明する必要があります。実際にどの資料を使い、どのような構成で立証するかは、詳しい事情を確認したうえで、正式なご依頼後に判断いたします」
この伝え方であれば、問題の難しさと行政書士の専門性を示しながら、有料サービスとの境界も明確にできます。
3.匿名化した事例を使って専門性を伝える
言葉だけで説明するのが難しい場合は、個人情報を伏せたうえで、過去の事例を紹介する方法もあります。
例えば、
- 説明が不足していた書類と、論点を整理した書類の違い
- 審査で疑問を持たれやすい申請と、疑問を先回りして説明した申請の違い
- 単に資料を提出する場合と、資料同士の関係を整理して提出する場合の違い
などを説明します。
完成した書類そのものを見せるのではなく、「考え方」「構成」「審査官が確認するポイント」を事例として示すことが重要です。
これにより、相談者は「書類を集めるだけではなく、申請全体の設計が必要なのだ」と理解しやすくなります。
補足・注意点
無料相談で許可の可能性を伝える際は、断定的な表現を避ける必要があります。
過去の類似事例や一般的な審査基準から見込みを説明できても、最終的な判断を行うのは審査機関です。
そのため、
- 必ず許可されます
- この資料を出せば問題ありません
- 許可率は何%です
といった断定は避けたほうが安全です。
「現時点で伺った事情では、許可の可能性はあると考えます。ただし、詳しい事実関係や提出資料を確認しなければ、正確な判断はできません」と説明するとよいでしょう。
また、無料相談が長時間になりやすい場合は、あらかじめ相談時間や回答範囲をホームページに明記する方法もあります。
無料相談で個別の申請書類を添削したり、具体的な立証方法を設計したりするところまで対応する必要はありません。
無料相談は、相談者の疑問をすべて解消する場ではなく、問題を整理し、次に取るべき行動を判断してもらう場と考えると線引きしやすくなります。
まとめ
行政書士の無料相談では、専門性を伝えることと、ノウハウを守ることの両立が大切です。
無料相談では、
- 審査上の問題点を整理する
- 許可へ向けた方向性を示す
- 専門家による支援が必要な理由を説明する
ところまで対応します。
一方、具体的な必要書類の選定、証拠の組み立て、申請理由書の作成などは、受任後の業務として明確に分けるとよいでしょう。
相談者に役立つ情報を丁寧に伝えながらも、専門家として提供している価値まで無償にする必要はありません。
あらかじめ回答範囲を決めておくことで、毎回迷うことが減り、相談者に対しても一貫した説明ができるようになります。





