士業の従来の仕事がなくなる中で、これからどうしていくべきか?
今日のお話は、こういった部分への洞察力を磨くのにも役立ちますので、参考にしていただければと思います。
先日、ザメディアジョングループ代表の山近繁幸様にお会いしました。
(上の写真:一番左の男性です)(写真右側の2名の方は、山近さんのカバン持ちの新社会人さんです)
その際にお話した内容を、「歴史に学ぶ」という観点でまとめてみました。
短時間で、他人の貴重な経験を疑似体験できる
ドイツの名宰相とも言われているオットー・フォン・ビスマルクの名言に、こんなものがあります。
愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶ。
~オットー・フォン・ビスマルク~ (1815年~1898年)
実際、マーケティングのことを考えてみても、「孫子の兵法」や「ランチェスター戦略」など、歴史から得られた戦略がたくさん存在します。
これらの戦略は、もともとは軍事戦略でしたが、その考え方をマーケティングに応用できるのです。
広い意味で、戦争もマーケティングも、「ライバルがいる」「戦う」という部分が共通しているので、同じ考え方が役立つのです。
私も最近、歴史に興味を持ち始めて、哲学史や科学史、数学史などが好きで勉強しています。
歴史に学ぶことで、他人の経験を短時間で疑似体験することができます。
例えば、300ページほどの伝記を読むとしましょう。
これくらいのページ数であれば、数時間もあれば読めるでしょう。
たった数時間で、その人の人生経験のハイライトを疑似体験できるのは、非常に効率が良い学びだと言えます。
では、なぜ歴史に学ぶことが、それほどまでに大事なのか?
どんなポイントに気をつければいいのか?
そのポイントを、3つにまとめてみました。
学ぶ上でのポイント3つ
(1)優れた洞察力が身につき、ビジネスにも役立つ
歴史を学ぶことで、「社会の流れ・仕組みがわかる」というメリットがあります。
これは、ビジネスにも大きく役立ちます。
どういうことか?
簡単に説明しますね。
歴史を学ぶということは、「年号を覚える」といったこととは本質が異なります。
日本の歴史教育は、「何年に何が起こった」などの暗記が中心ですが、本質はそこではないのです。
- どんな背景でそれが起こったのか?
- それが人間社会にどう影響したのか?
こういった洞察力が身につくことで、ビジネスを含め、あなたの人生に大きく役立つのです。
イギリスは昔、世界の半分を植民地として統治していました。
なぜこんなことが出来たのか?
理由は、イギリスがとことん歴史を学んだからです。
当時、植民地であるアフリカ、南アジア、オセアニアなどの人々は、イギリスの支配に対抗しようとしました。
しかし彼らは、自分たちの狭い経験のみで対抗しようとしたので、良い対抗策を見いだせず、結局植民地化されてしまいました。
一方、当時のイギリスは、ローマの歴史や、マキャベリ(君主論で有名)などから徹底的に学んでいました。
その昔、古代ローマ帝国は、「分割統治(植民地同士の連帯を禁じた)」という方法を用いて、征服した多くの都市の反乱を抑えることに成功していたのです。
これをイギリスが徹底的に研究し尽くし、インドの植民地化などの際に実行し、成果を収めたのです。
上記の事例は、国家間の植民地化の事例ですが、これはビジネスでも同じです。
上述の「分割統治」の話も、士業の業界に応用できる部分がたくさんあります。
例えば、事業をフランチャイズ化する時に、全体をどう統括するか?を考えるヒントにもなるでしょう。
また、士業は他士業と連携して仕事を行うことが多いものです。
例えば、税理士から社会保険労務士に仕事が回ったり、社会保険労務士から弁護士に仕事が回ったり。
このように複数人数で仕事をする時に、どうすればより効率的に仕事できるか?といった部分へのヒントも得られるかもしれませんよね。
自分の経験だけで戦おうとしても、結局は狭い経験しか参考にできません。
歴史の大きな流れ、仕組みを知らないと、「井の中の蛙大海を知らず」ということにもなりかねません。
歴史に学び、その中で有効だった方法を取り入れることで、ライバルを上回ることができるのです。
(2)歴史は繰り返す。士業の従来の仕事がなくなり、真の価値が問われる。
「歴史は繰り返す」という言葉があります。
その時の状況や登場人物は異なりますが、大きな流れは確実に繰り返されていきます。
人間の経済成長の歴史を見てもそうです。
産業革命や機械化などが進み、ビジネスの在り方は大きく変わってきています。
言ってみれば、「人間は、どんどん楽しようとする方向に進化している」とも言えます。
例えば、ヨハネス・グーテンベルクによって発明された「活版印刷」は、革命を起こしました。
これにより、「本を代筆する人」という仕事は、機械に取って代わられました。
また、冷蔵庫が発明されたことで、「氷屋さん」はその数を一気に減らしました。
「働く」という言葉は、「傍(はた)を楽にする」という意味もあると聞きます。
そういった意味でも、「楽しようとする」方向に進化するのは、ある意味当然とも言えます。
このように、時代が移り変わることで、新たな「楽しようとするもの」ができ、従来の仕事がなくなっていきます。
これは、時代の流れを見ても明らかです。
では、士業の業界に当てはめると、どうでしょうか?
あなたも感じていると思いますが、士業の業界も、これと同じ流れを辿っています。
例えば、税理士の業界で言えば、クラウド会計がどんどん主流になってきています。
スマートフォンなどで領収書を読み込めば、自動で仕分け・記帳代行までしてくれる時代です。
こうなると、税理士・会計士の仕事の本質が問われるようになります。
これは決して「税理士・会計士が不要になる」と言っているのではありません。
IT化が進み、単純作業の価値が減る中で、より大きな価値を生み出すにはどうすればいいのか?
これを真剣に考えられるようになる、ということです。
これは、税理士の事例ですが、他の士業も同じです。
書類作成のような単純作業の価値は、IT化や人工知能などの技術革新により、どんどん下がっていくでしょう。
- その中で、世の中の人が何に価値を見出すのか?
- あなたは、どのようなやり方で、傍を楽にさせることができるのか?
歴史に学べば、楽な方向に進化する中で、次の時代がどんな価値を求めるのか?が予測できるようになってきます。
つまり、どんな需要が出てくるのか?を予測できる、ということです。
需要が予測できれば、その需要を満たすサービス・商品を提供すれば良い、ということになりますよね。
ぜひ、歴史をあなたの仕事に活かして頂ければと思います。
(3)個々の出来事にとらわれず、大きな流れを意識する
歴史上の出来事は、その個々の出来事に学ぶことも多いものです。
それに加えて、「人間社会がどのように変化してきたのか?」といった、全体の大きな流れを意識すると、より活用しやすくなります。
イメージとしては、以下のような感じです。
上図のように、近い視点だけで変化の方向性を判断しようとしても、なかなか難しいものです。
全体の大きな流れを見れば、変化の方向性が分かりますよね。
人間社会の変化は、細かいところで見ると違うように感じますが、全体の大きな流れは同じであることが多いものです。
例えば、先ほどお話した「人間は、楽しようとする方向に進化する」というのも、大きな流れの一つといえます。
歴史の一部分だけでなく、全体の大きな流れを意識して学びを深めてみてくださいね。
では、どんな手順で学べばいいのか?
ここまでで、歴史に学ぶ重要性や、そのポイントを解説してきました。
では、どんな手順なら、効率よくスムーズに歴史を学べるのか?
その答えは、極論すると私は「どんな順番で学んでもいい」と考えています。
何故かと言うと、歴史は、いろいろな分野が相互に絡み合って作り上げられているから、です。
例えば私の場合、歴史に興味を持って学び始めた経緯は、以下のような順番でした。
- ウォルト・ディズニーなどの伝記を読み、「昔の人の決断力、考え方はすごいなぁ」と感心する
- その考え方の歴史を知るため、西洋東洋の哲学史を学ぶ
- 哲学の考え方を、物理の「量子力学」の分野が科学的に証明しようとしていると聞き、量子力学を学ぶ
- 量子力学を学ぶ上で、たくさんの数式と出会ったので、数学史に興味を持ち学ぶ
このように、一見、なんの脈絡もない流れのようですが、歴史はちゃんとつながっています。
勉強すればするほど、「ああ、この人の考え方には、この時代のこういう出来事が影響していたのか」のように、つながりがどんどん見えてきます。
これも、歴史の面白いところです。
お勧めの歴史学習の手順
私のお勧めは、「自分が興味を持てるところから学ぶ」ということです。
好きこそものの上手なれ、とも言いますが、興味を持ったところから学ぶのが、一番深い学びを得られます。
自主的な学びでなければ、得られるものは少なくなります。
私の場合、ディズニーが好きだったので、ウォルト・ディズニーの伝記からスタートしました。
そこから哲学史や量子力学、数学史に進んでいくとは、まったく思ってもいませんでした。
しかし、やはりちゃんと歴史はつながっていて、底から得た学びは、私の仕事やプライベートに大きく役立っています。
そういった意味では、伝記は、取っ掛かりとしてお勧めできると思います。
「一人の人間が、どういったことに興味を持ち、どんな決断をし、どんな行動をしてきたのか?」を読むことで、感情移入もしやすく、興味を持ちやすいと感じています。
なお、今ではいろいろなジャンルの本で、マンガ形式のものが出ていますので、これもお勧めです。
「漫画で学ぶ●●」のような本、書店でたくさん見かけますよね。
マンガは、ストーリーと絵が理解を助けてくれるので、取っ掛かりとして非常に良いです。
まとめ
世の中の偉人は、本業に関することだけでなく、歴史や芸術などの分野にも秀でている人が多くいます。
彼らは、歴史などの別分野から学び、それを本業に活かしたことで、大きな成果を挙げられたのです。
ビジネスの世界で言えば、歴史に学ぶことで、「学ぶ」⇒「需要の変化、時代の変化の流れをつかめる」⇒「次の時代の需要を予測できる」という洞察力を身につけることが出来ます。
これは、歴史を学んだ人にしか得られない知見です。
ぜひあなたも、興味の持てるとことからスタートして頂ければと思います。
参考になれば幸いです。
編集後記
今回お食事をご一緒させて頂いた山近繁幸様には、私の初出版もご支援頂きました。
本当にありがとうございます!
※初出版に関する関連記事はこちら:
⇒ 失敗学。ミスの原因を分析し、成功につなげる方法
山近さんは、知覧研修という研修も行っています。
知覧研修は、知覧(特攻隊出撃基地)という日本の歴史に向き合い、自分が生きることの意味を考え、感性を磨くという趣旨で開催されているそうです。
こういった山近さんの活動もお聞きし、今回、「歴史に学ぶ」という観点でお話させて頂いた次第です。
2017/11/22(水)には、記念すべき200回目の知覧研修が開催されるとのこと。
ご興味のある方は、ぜひご参加くださいね。
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