フロントエンド・バックエンドというのは、マーケティング業界では一般的な用語で、それぞれ
- フロントエンド:見込み客を集めるサービス・商品
- バックエンド:利益を出す本命サービス・商品
のことを指します。
フロントエンド・バックエンドが上手く噛み合うと、あなたの事務所を安定的に成長させてくれるものになります。
今日は、このフロントエンドとバックエンドの作り方について、解説します。
フロントエンド・バックエンドの例
まずは、イメージを掴んで頂くために、いろいろな業界の例を見てみましょう。
ビジネスでは、自分の業界だけでなく、他業界のノウハウや成功事例を取り入れることで、飛躍的な結果を出せるようになります。
ですので、他業界の事例だからと言って嫌煙せず、他業界の事例だからこそ、そこから本質的な学びを見つけていきましょう。
例1:英会話教室
一般的なものを例に挙げると、例えば英会話教室で言えば、
- フロントエンドは「無料体験レッスン」
- バックエンドは「有料レッスン」
と言うかたちになっているわけです。
いきなり申し込むのは不安なので、無料体験があることで、不安を解消でき、有料レッスンにつながる、という訳ですね。
例2:化粧品
「化粧品」で言えば、
- フロントエンドは「お試しセット」
- バックエンドは「本商品、定期購入」
になります。
ドモホルンリンクルなどは、まさにこのパターンですね。
例3:旅行
「旅行」で言えば、
- フロントエンドは「基本のパッケージ」
- バックエンドは「オプショナルツアー」
と言うかたちになっているわけです。
まずは基本のパッケージを申し込んでもらい、希望者にはオプショナルツアーにも参加してもらう。
こうすることで、全体で見た時の売上を最大化できるわけです。
例4:士業(社労士、税理士など)
他にも、社会保険労務士であれば、「助成金診断⇒顧問契約」という流れでやっている事務所もありますよね。
税理士事務所だと、「会社設立を0円で受けて、その後に顧問契約がセットになっている」というのも、フロントエンド・バックエンドになっています。
このように、フロントエンド⇒バックエンドを活用して成功しているものは、実にたくさんあるのです。
これを活用しないのは、もったいないですよね。
先にバックエンドがあり、それを元にフロントエンドを作ろう
ここで大事なのが、「先にバックエンドがあって、バックエンドを元にフロントエンドを作る」という考え方です。
フロントエンド・バックエンドという言葉だけ聞くと、「先にフロントエンドを作って、その後にバックエンドを作るんだな」と考える人がいますが、逆です。
先にバックエンドがあって、そのバックエンドを元にフロントエンドを作る、のが正解です。
なぜかと言うと、その方が楽だし、成功しやすいからです。
バックエンドは、既存のサービスで良い
極論すると、バックエンドは、既にあなたが持っているサービスでいいのです。
その中の一部を抽出して、フロントエンドにするだけです。
こうすることで、フロントエンドを一から作る手間がなくなるので、楽ですよね。
フロントエンドは、バックエンドに繋がらなければ意味がない
また、フロントエンドは、バックエンドに価値がつながらないと意味がないものです。
フロントエンドから作ろうとすると、稀に、バックエンドとの関連性がなくなってしまうケースがあります。
フロントエンド・バックエンドの失敗例
バックエンドから逆算してフロントエンドを作れば、こういった失敗は防げます。
では次に、フロントエンドの役割について解説していきます。
フロントエンドの役割
まず、フロントエンドの役割ですが、以下の2つの役割を満たしていればパーフェクトです。
- バックエンドを売るための、見込み客を集めるサービス(商品)
- 分かりやすい(~~できるようになる、~~が得られる、など)
このうち、「分かりやすい」について、少し解説します。
フロントエンドは、分かりやすくなければならない
フロントエンドは、見込み客に最初に手にしてもらうものなので、「(効果が)分かりやすい」ことが重要です。
そもそも、士業のサービスが分かりづらいから、フロントエンドで「分かってもらおう」というわけなので、フロントエンドが分かりづらかったら本末転倒です。
分かりやすいものの例としては、
- 障害年金申請の3つのポイントが分かる!
- あなたがもらえる助成金が分かる!
のように、「~~できるようになる」「~~が得られる」など効果が分かりやすいものがベターです。
フロントエンドを用意するメリット×4
次に、フロントエンドのメリットについて、順番にお話します。
(メリット1)ハードルが低いので申し込まれやすい
一つ目のメリットは、「ハードルが低いので申し込まれやすい」ことです。
フロントエンドは、無料もしくは低価格で使ってもらえるので、お客様にとってハードルが低く、申し込みしやすいものです。
気軽に一歩踏み出してもらえるので、とても効果的になります。
(メリット2)一度接触すれば、こちらから再度アプローチできる
2つ目のメリットは、「一度接触すれば、こちらから再度アプローチできる」ということです。
例えば、あなたがフロントエンドとしてセミナーを開催したとします。
そして、その時は本商品を申し込まれなかったとしても、参加者のリスト(メールアドレスなどの連絡先)が手に入りますよね。
そうなれば、次にまたセミナーを開催する時は、こちらからアプローチできるようになります。
(メリット3)競合より先に接触できるので、比較される前に差別化できる
3つ目のメリットは、「競合より先に接触できる」という点です。
あなたがライバルと全く同じサービスを扱っていたとします。
お客様から見たら、どちらも違いがよく分からないわけですが、あなたが何かしらのフロントエンドを用意していると、話は別です。
「試しに申し込んでみよう」とフロントエンドを申し込んでくれたお客様は、ライバルより先に、あなたと接触した、ということになります。
するとあなたは、本商品を比較される前に、お客様に「値段以外の判断基準」などを伝える機会を得られる訳です。
こうなれば、ライバルと比較される前に優位に立てるので、とても効果的なのです。
(メリット4)信頼してもらえれば、バックエンドが多少高くても買ってくれる
最後が、「信頼してもらえれば、バックエンドが多少高くても買ってくれる」という点です。
士業のサービスは分かりづらいので、「多少高くても、知っている人のほうが安心」という心理が働きます。
これにより、バックエンドをライバルよりも高く売れるようになるのです。
以上が、フロントエンドのメリット4つになります。
フロントエンドの作り方・具体例
では、ここからは、具体的な「フロントエンドの作り方」について解説します。
先程も言いましたが、フロントエンドは、「一からわざわざ作らない」のがポイントです。
イメージとしては、バックエンドの一部を抽出する、といったイメージです。
士業が使えるフロントエンドとしては、次のようなものが挙げられます。
※無料サービスをフロントエンドとして扱わないケースもありますが、ここでは、無料サービスもフロントエンドとしてご紹介します。
順番に解説していきます。
(1)メルマガ登録
メルマガ登録は、フロントエンドの代表的なものです。
人間は「知らない情報を知りたい」という欲求があるので、メルマガで情報提供してあげる、ということです。
ただ、メルマガ登録してもらう時には、ただ単に「役立つ情報をお伝えします」では、登録してもらえません。
世の中には無数のメルマガがありますので、「役立つ情報をお伝えします」だけでは、登録する魅力を感じてもらえないのです。
そこで、メルマガ登録には「オファー」を用意してあげる必要があります。
オファーとは、「行動してもらうための特典」のような意味合いですが、例えば
- 無料レポート
- 動画
などは、オファーとして一般的です。
例えば、「最新の助成金リスト一覧をプレゼント」など、メルマガに登録する理由を付けてあげることで、登録を促せます。
名刺を勝手にメルマガ登録しない
(2)セミナー(ウェビナー)
セミナーも、フロントエンドとして活用できます。
例えば税理士なら、「決算書の読み方&活用法セミナー」といったセミナーも良いでしょう。
セミナーを開催し、そこに参加してもらい、無料相談につなげる、といった流れです。
なお、最近は、インターネットでウェビナー(ネット上でのセミナー)を行う人もいますが、流れは同じです。
セミナーには、3つのメリットがあります。
- (1)無料相談よりもハードルが低い
- (2)先生と生徒の立場になれる
- (3)自分の考え方、方法、ノウハウを理解してもらえる
(セミナーのメリット1)無料相談よりもハードルが低い
セミナーのメリット1つ目は、「無料相談よりもハードルが低い」ことです。
無料相談を行っている人は多いと思いますが、セミナーは、その無料相談よりもハードルが低く、参加してもらいやすくなります。
なぜなら、セミナーは「1対1」ではなく「1対多」だからです。
「1対1」の無料相談は、お客様にとっても逃げ場がないので、すこし緊張するものです。
一方、セミナーは「1対多」なので、気楽に参加してもらえます。
(セミナーのメリット2)先生と生徒の立場になれる
セミナーを開催すると、自然と
- あなた=先生
- 参加者=生徒
という立場になります。
「先生」という立場を確立できるので、信頼されやすくなります。
(セミナーのメリット3)自分の考え方、方法、ノウハウを理解してもらえる
セミナーでは、あなたの言葉を直接伝えることができます。
ホームページ上だけでは伝わらないことも、セミナーの場では身振り手振りも交えて伝えられます。
自分の考え方やノウハウを理解してもらえるので、自然とあなたに共感してくれる人だけが無料相談に来てくれるようになります。
結果的に、あなたも対応しやすくなり、お客様にも喜ばれます。
既存客に、知り合いを連れてきてもらうのもGood
例えば、以下のようなイメージです。
「今度、決算書の読み方&活用法セミナーを開催します。
一般のお客様には、通常参加費5000円をいただくのですが…
●●さんのご紹介ということであれば、今回は無料でご参加頂けるようにしますので、お知り合いの経営者の方をぜひ招待してあげて下さい」
連れてきてくれますか?ではなく、ぜひ招待してあげて下さい、と伝えてください。
このようにすると、既存客も「特別扱いしてくれた」と、自分のメンツが保てますし、見込み客を連れてきてくれて、一石二鳥です。
また、自然とあなたを「いい税理士さんなんだよ」とティーアップしてくれる人もいたりするので、とても効果的です。
(3)ワークショップ
ワークショップも、効果的なフロントエンドの1つです。
先ほどのセミナーは「あなた⇒参加者」の一方通行のものですが、ワークショップは「あなた⇔参加者」の双方向のコミュニケーションが生まれやすくなります。
例えば、「相続税の試算ワークショップ」などを開催し、実際に自分の相続税を試算してもらう、というワークショップも考えられますよね。
(4)無料相談
無料相談を行っている人も多いと思いますが、これも1つのフロントエンドになります。
ただ、無料相談を「単なる無料相談」と伝えるだけでは、あまりうまくいきません。
無料相談やってます、だけでは、他のライバルもやっていますので、差別化できないのです。
「無料相談にも価値をもたせる」事が重要なのです。
例えば、
- 無料相談に来ると、~~が手に入る!
- 無料相談に来ると、~~についての問題解決の道筋が分かる!
などです。
具体的には、
- 「無料相談に来ると、あなたに合わせた助成金リストが手に入る」
- 「無料相談に来ると、相続のやるべき手順がわかる」
といった形ですね。
あなたのところに無料相談に来た人は、必ず何かしらのメリットを得ているはずです。
それをちゃんと伝えてあげる(見える化する)必要があるのです。
このように、無料相談にも価値を持たせて、それを伝えるようにしましょう。
(5)無料診断
無料診断も、フロントエンドの1つです。
例えばよく見かけるのは、「助成金の無料診断」などですね。
無料診断は、お客様は何かしらのシートやフォームに入力するだけなので、無料相談よりもハードルが低くなります。
(6)無料お試し(一定期間無料)
「無料お試し」というのは、例えば「一定期間、無料でご利用頂けます」のようなものです。
例えば「この会計ソフトを無料で使えます」というのも、無料お試しの1つです。
あなたのサービスの中で、無料で試してもらえるものはないか?ぜひ探してみて下さい。
(7)小冊子、資料請求
小冊子や資料請求も、フロントエンドになります。
例えば、
- 失敗しない~~の選び方
- ~~で失敗しないコツ
といった内容は、多くの人にとって気になる内容なので、お勧めです。
(8)書籍、DVD
書籍やDVDなどのコンテンツを持っているのであれば、それらを活用するのも手です。
書籍やDVDは、あなたのことを知ってもらうために、まず一歩踏み出す商品として適しています。
書籍やDVDは、本命サービスと比べると、売上自体は小さなものですが、少額でも「お金を払ってくれる」というのが大事なのです。
少額でもお金を払ってくれるということは、少しでもファンになる、ということだからです。
書籍やDVDであなたを知り、信頼してくれれば、本商品につながる可能性も高くなります。
(9)無料もしくは成功報酬のサービス
お持ちのサービスの中で、無料・もしくは成功報酬で提供できるサービスがあれば、それをフロントエンドにするのも手です。
例えば、分かりやすいのは
- 会社設立0円 ⇒ 顧問契約
- 助成金申請を成功報酬で請け負う ⇒ 顧問契約
のような流れですね。
ポイントは、入り口のハードルを下げて、「お客様に損がない」状態にすることです。
成功報酬での助成金申請サポートはまさにそうで、「助成金が得られなければ、報酬を支払わなくていい」ので、「お客様に損がない」ですよね。
以上、これらの9つのうち、あなたが提供できそうなものはどれでしょうか?
ぜひ、考えてみてくださいね。
フロントエンドのポイント
最後に、フロントエンドのポイントをお伝えします。
(1)フロントエンドを魅力的に見せる
フロントエンドは、「魅力的に見せる」事が大事になります。
例えば、「資料請求」と案内するのではなく、「~~のノウハウ満載のガイドブックをプレゼント」と案内する、といったイメージです。
伝え方を変えるだけでも、受ける魅力が違いますよね。
先ほどお話した「無料相談にも価値をもたせる」もそうですが、魅力的に見せるというのは、とても重要です。
(2)手を抜かない
フロントエンドは、見込み客に最初に手にしてもらうものになります。
ここで手を抜くと、「結局、無料だから(安いから)こんなものか」と思われてしまい、バックエンドに繋がらなくなります。
フロントエンドは、「無料でもこんなにすごいなら、有料のサービスはもっと凄いんだろう!」と思って貰う必要があります。
フロントエンドだからといって手を抜いてはいけないのです。
(3)バックエンドとの関連性を失わないようにする
大前提ですが、フロントエンドは、バックエンドにつなげるためものもです。
フロントエンドを作ったら、必ず
- バックエンドにスムーズにつながるか?
- バックエンドとの関連性があるか?
を確認しましょう。
(4)フロントエンドだけで利益を出そうとしない
フロントエンドは、それだけで大きな利益を生むものでなくて大丈夫です。
利益を出すのはバックエンド。
つまり本商品のほうで、フロントエンドはあくまで見込み客を集めるためのものです。
フロントエンドは、場合によってはそれだけ見たら赤字になることもあります。
そのため、バックエンドでしっかり利益を出せるようにすることが大事になります。
フロントエンドとバックエンドの全体を見て、全体で利益が出れば良いのです。
以上が、フロントエンドのポイントになります。
これらを忘れないようにしておきましょう。
バックエンドの役割
では次に、バックエンドについて解説します。
バックエンドの役割は、以下の2つの条件を満たしていればOKです。
- 利益を出すこと
- あなたの最高の価値を伝えるサービスであること
バックエンドの作り方
では、バックエンドの作り方についてです。
バックエンドは、基本的に、今ある既存のサービスで大丈夫です。
そこにさらに付加価値を追加して、値上げを目指していきます。
付加価値を追加する方法としては、次の5つが効果的です。
1つずつ解説します。
(1)既存サービスに、よくある要望への対応を追加する
一つ目は、「よくある要望への対応を追加する」です。
これまでに、既存のお客様から
- こういったことできますか?
- こんなことに悩んでいて…
といった話を聞いたことはないですか?
それらはすべて、お客様に要望(ニーズ)そのものです。
それらの悩みを解決できるサービスを付加価値として付けてあげれば、喜ばれますよね。
(2)既存サービスに、個別対応して喜ばれたことを追加する
二つ目は、「個別対応して喜ばれたことを追加する」です。
件数としてはあまり多くなくても、少数のお客様から
- こういったことできますか?
- こんなことに悩んでいて…
といった話を聞いたことはないですか?
そういった要望は、潜在的に他のお客様にも求められている可能性があります。
基本的に、悩みというのは、「ある人しか悩んでいないこと」というものはなく、「ある人が悩んでいれば、他にも同じ悩みを抱えている人がいる」ものです。
であれば、それを解決できるサービスを付けてあげれば、喜んでもらえる、ということになります。
(3)専門化する
「専門化する」というのも効果的です。
例えば、よくあるのが「歯医者に強い税理士」のような、業界を特化する方法です。
特化すると、その分野により精通できるので、提供できる価値が高まります。
例えば、歯医者ばかり見ていれば、売上アップのポイントなども見えてきて、コンサルできるようになりますよね。
このように、何かに専門化することで、単価アップが狙えます。
(4)ライバルが行っているサービスを参考にする
ライバルがどんなサービスを提供しているのか?を研究するのもポイントです。
ライバルのホームページや、事務所案内を見れば、書かれていることも多いものです。
(5)どんなサービスがあったら嬉しいか?既存客に聞く
確率的に一番成功しやすいのは、「既存客に直接聞く」ことです。
既存客の声は、あなたのサービスをブラッシュアップする上で、最も貴重なものです。
付加価値をつける時に重要なのが、「当てずっぽうでやらない」ことです。
既存のお客様の悩み・要望から逆算することで、高確率で、お客様に本当に求められている付加価値が見つかります。
直接聞くのが一番ですが、難しければアンケート形式でも良いでしょう。
付加価値をつけるか?選べるようにする
いわゆる、オプション的なイメージですね。
例えば車を買うときだって、車を買ったあとに、ナビを付けるか?などを追加提案されますよね。
それと同じようなイメージです。
付加価値を求めているお客様もいれば、そうでないお客様もいます。
であれば、まずはオプション的に選べるようにして、その後、多くの人が求めるものが分かったら、正式にサービスに組み込んで値上げすれば良いのです。
以上が、バックエンドの作り方になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「フロントエンド・バックエンド」について解説しましたが、実践の順番を整理しておきます。
- (1)バックエンドとなる既存サービスを決める(無いなら、作る)
- (2)バックエンドに付加価値をつけて、値上げできないか?考える
- (3)バックエンドにつながるフロントエンドを作る
- (4)フロントエンドを売る
この流れで実践するとスムーズに行きますので、ぜひ実践してみてくださいね。
参考になれば幸いです。