顧客満足度を向上させることで、目に見えて感じられる変化は、売上アップや紹介の増加です。
また、近年話題になっている、ITや人工知能の目覚ましい発達に柔軟に対応するという点でも、顧客満足度を上げることは、とても大事です。
今日は、そんな「顧客満足度を上げる心がけ」について、解説していきます。
お客様満足度を上げるには?私がスタバで体験した事例
私のお気に入りのスタバがあるのですが、そこでの体験を少しシェアしたいと思います。
先日、我が家に第二子が産まれたのですが、なんと第二子出産のお祝いのメッセージカードを、スタバのスタッフさんが一人ひとり書いてくださったのです。
もちろん、私がとても嬉しく、感動したのは言うまでもありません。
これを機に、私にとってのこのスタバは、「コーヒーが飲める場所」ではなく、「温かいスタッフさんが歓迎してくれる場所」に変わりました。
私は、正直、コーヒーの味が分かる男ではありません。
他のお店との味の違いを判別することはできません。
それでも、完全に、このスタバは他のコーヒーショップとは違う存在になったわけです。
このように、商品やサービス以外の部分で、顧客に選ばれる要素があるかどうか?
これは、ビジネスをしていく上でとても大事なことです。
顧客満足度を上げるべき、3つの理由
顧客満足度は、CS(Customer Satisfaction)とも呼ばれ、CSに関連した本などもどんどん増えていますよね。
では、なぜ顧客満足度を向上させると良いのか?
それには、大きく3つの理由があります。
(1)売上アップできるから
顧客満足度が上がると、リピート率が上がります。
(同じサービスや商品のリピートでなくても、オプションサービスを一緒に申し込んでくれたり、他のサービスを追加で申し込んでくれたりします)
リピート率を上げるのは、売上アップを目指す上で、とても大切なことです。
マーケティングの大家でもあるフィリップ・コトラーの格言にも、こんなものがあります。
【1:5の法則】
新規客に販売するためのコストは、既存客に販売するためのコストの、5倍かかる
(つまり、既存客への販売コストは、新規客に売るコストの5分の1で済む、ということです)
【5:25の法則】
顧客離れを5%改善できれば、少なくとも利益が25%改善される
このように、既存のお客様に喜んでもらい、リピートや追加申込をしてもらうこと。
そして、顧客離れを防ぐこと。
これが、売上アップの大事なポイントなのです。
(2)紹介が増えるから
顧客満足度が上がれば、紹介も増えます。
特に士業は、紹介で仕事が回っていくことが多いので、紹介を増やすことはとても大切ですよね。
一点、紹介は、「お客様に満足してもらう」だけでは、なかなか増えません。
先ほど、私のスタバでの体験事例を出しましたが、私も「コーヒーが美味しい」「落ち着いて仕事ができる」という時点で、既に満足はしているわけです。
この満足を越えて、「出産祝いのメッセージカードをいただいた」ということがポイントです。
言ってみれば、満足を越えて、感動に至った、という感じでしょうか。
こうなれば、私は、誰に頼まれるでもなく、このスタバをいろいろな人に紹介したくなりますよね。
なお、以下のページで、紹介を増やす方法を解説していますので、合わせてご参照ください。
>> お客様が喜んでお勧めしてくれる!紹介獲得を増やす方法とは?
(3)ITや人工知能が発達し、仕事がシフトしていくから
近年、士業のみならず、多くの業界でITや人工知能の研究がされています。
近い未来、今の仕事の多くが、人間ではなく、ITや人工知能に取って代わられるでしょう。
例えば、税理士の「記帳代行」の業務は、既にクラウド会計ソフトに奪われつつあります。
行政書士や司法書士が行っている「会社設立」の業務も、会社設立freeeなどのソフトが出てきており、設立書類を作るのも誰でもできる時代です。
また、社会保険労務士の業務である「給与計算」や「勤怠管理」なども、クラウドソフトが対応してきています。
このように、ITや人工知能が発達していく中で、「人間がなすべきことは何なのか?」ということを、必然的に考えなくてはいけなくなってきます。
その一つの回答が、「顧客満足度を上げること」と言えます。
単純作業を、ITや人工知能が代行してくれるので、言ってみれば、単純作業にかかる時間を節約できます。
その節約できた時間で、今まで手が回らなかった顧客満足度の向上に取り組んでみましょう。
この後お話しますが、顧客満足度を向上させるには、「事前期待を超える」という考え方が大事になります。
つまり、お客様の期待を察知して、それを超えるという、心理的な要素が絡んできます。
この心理的な部分は、ITなどよりも、人間のほうが優れています。
そういった意味でも、今後は、「人間力で大きな差がつく時代になってくる」とも言えます。
顧客満足度を向上させるポイントは、「事前期待を超える」こと
では、顧客満足度を向上させるには、どうすればいいのか?
その具体的な方法は後述しますが、最重要ポイントとも言えるのが、「事前期待を超える」という考え方です。
人間は、商品を買ったり、サービスを受ける前の段階で、「事前期待」というものを持っています。
簡単に言えば、「その商品・サービスを使うことで、こんなメリットが得られるだろう」という期待です。
- この商品を使えば、業務にかかる時間がこれだけ短縮できるだろう
- このサービスを使えば、集客の悩みがなくなるだろう
こういった期待を、事前期待と呼びます。
この事前期待を超えられるかどうか?で、顧客満足度が変わってきます。
図式にすると、以下のようなイメージです。
- 「事前期待 < 商品・サービス」の場合、感動
- 「事前期待 = 商品・サービス」の場合、満足
- 「事前期待 > 商品・サービス」の場合、不満足
このように、「事前期待 < 商品・サービス」の状態になればいい、ということです。
顧客満足度を上げる原則は、基本これだけです。
これを常に頭に入れておけば、仕事をしている中で「あ、これもやれば、事前期待を超えられそうだぞ」などの気付きも得られるので、覚えておきましょう。
お客様満足度を上げる心がけ×10
それでは、お客様満足度を上げる心がけを、10個ご紹介します。
すべて実践しなくても、1つだけでも効果的です。
ぜひ、まずは1つでもいいので、実践してみてください。
(1)お客様が大切にしているものを理解する
人間は、「自分が大切にしているものを大切にしてくれる = この人は仲間だ」と感じます。
先ほどの、私のスタバでの体験事例も、これと同じです。
私が「家族を大切にしたい」と思っていて、そこにメッセージカードをくれたので、「ああ、このスタッフさん達は、私の家族を大切にしてくれている」と感じたのです。
その結果、私の満足度が急上昇した、というわけです。
- 自分が大事にしているものを覚えてくれている(家族、健康、など)
- 自分の誕生日や記念日を覚えてくれている
- 家族の誕生日や記念日を覚えてくれている
こういった対応は、お客様を感動させますね。
(2)ひいきする(常連客と一見さんに差をつける)
「ひいきする」と聞くと、聞こえが悪いかもしれませんが、要するに「大事なお客様ほど、手厚く対応しましょう」ということです。
差別ではなく、ちゃんと区別して対応しましょう、ということです。
例えば、あなたが税理士だとして、10年お付き合いしている顧問先と、今日契約になった顧問先がいるとしましょう。
そして、全く同じサービスを両者に提供したとします。
一見、お客様を平等に扱っているように見えますが、10年お付き合いのある顧問先からすると、不満が出る場合があります。
「私は10年お付き合いしているのに、新規客と同じ扱いなのか…」と。
飲食店などでも、常連客にだけ特別メニューがあったりしますよね。
ディズニーランドだって、常連客には、ホテルの部屋をグレードアップしてくれたりします。
このように、常連さんほどひいきする。
ちゃんと区別して対応する。
これが、顧客満足度を高めるのです。
(3)小さなことでも忘れない
人間は、たとえ小さなことであっても、自分のことを覚えてくれていると嬉しくなるものです。
例えば、趣味を覚えていてくれたり、好きな食べ物を覚えていてくれたり、ですね。
ちなみに、私の顧問税理士の先生は、私がスタバが大好きなことを知っています。
なので、海外旅行に行った時など、いつもお土産に、現地でしか手に入らないスターバックスのタンブラーを買ってきてくれます。
これも、私にとっては、とても嬉しいことです。
言うまでもなく、私の満足度は上がっています。
(4)無視しない
人間は、無視されると、一気に気持ちが冷めます。
「お客様を無視することなんて無いだろう」と思われがちですが、仕事の中で、お客様を無視してしまっているケースがあります。
例えば、顧問先からのメールに、業務連絡と一緒に、オマケ的な感じで「この前教えてもらった節税対策やってみました」のような内容が書かれていたとします。
このメールに、業務連絡だけ返してしまい、節税対策には触れないと、顧問先のお客様は「無視された」と感じます。
「実践してくださったのですね、とても嬉しいです」のように、一言付け加えてあげれば、解消されますよね。
他にも、「ちょっとした相談事にちゃんと対応する」ということも大事です。
例えば、「調べておきますね」と言ってから、その後連絡もない。
こうなると、やはり「無視された」と感じます。
お客様を無視せず、1つ1つ丁寧に対応していきましょう。
(5)共感する(※同感とは違う)
人間は、自分に共感してくれる人を好きになる傾向にあります。
例えば、お客様の苦労話に「大変なご苦労をされたのですね」と共感する。
お客様の趣味の話に「その達成感がたまらないんですね」と共感する。
このような小さなことの積み重ねが、信頼を築いていきます。
似たような言葉で、「同感」という言葉もありますが、共感と同感は違います。
例を挙げてみましょう。
例えば、相手が友達の悪口を言っていたとします。
この時に、「その友達に、●●って言われて、傷ついたんだね」と言うのが、共感です。
一方、「本当に、その友達って嫌な人だね、私もそう思うよ」と言うのが、同感です。
違いが伝わりましたでしょうか?
要するに、共感は、「仮に自分が同じ思いではなくても、”(あなたは)そう感じたんですね”と反応すること」と言えます。
一方、同感は、「”(あなたは)そう感じたんですね。(私も)そう思います”と反応すること」と言えます。
なので、たとえ自分と相手の感じ方が違ったとしても、共感することはできるのです。
(6)誉める
人間は、褒められると嬉しくなります。
例えば、お客様から節税について「こういう対策をすると、節税できると思うんですけど、どうですか?」と質問されたとします。
そこに対して、いきなり「いや、それは難しいですね、なぜなら~」と言われると、お客様はガッカリします。
そうではなく、たとえ現実的に難しい場合でも、まずは「●●さん、その対策、よくご存知ですね」と誉める事が大事です。
その上で、難しい場合にはその理由をちゃんと伝えてあげる。
こうするだけでも、お客様の受け取り方は全く違ってきます。
(7)感謝する
小さなことでも、お客様に感謝を伝えましょう。
例えば、お客様が書類を用意してくれたら「~~を用意してくださってありがとうございます」のように伝えるのも、立派な感謝です。
(8)アナログなつながりを強める
IT化がどんどん進んでいくと、、逆にアナログなつながりの方が貴重になってきます。
例えば、ハガキや手紙を書く、などの紙面でのやり取りがあると、相手は「自分が大切にされている」という気持ちになります。
既存のお客様向けに、ニュースレターを発行するのも効果的です。
当社も以下のようなニュースレターを、お客様向けに発行しています。
お客様からも、「ニュースレター読みました!」などの感想をいただくので、当社とお客様の絆を深める、大事なツールになっています。
(9)スタッフ、一緒に仕事する人に感謝する
顧客満足度とよく一緒に出てくる概念が、「従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)」です。
要するに、「従業員が満足して働いてくれていれば、その従業員が自然と顧客のために行動するようになるので、顧客満足度も上がる」といった考え方です。
つまり、一緒に働いている人への配慮も大事だ、ということです。
例えば、事務所内のパートさんに感謝を伝える。
他にも、一緒に仕事をしている他士業の人にも感謝を伝える。
こうしていくことで、その感謝が相手をやる気にさせて、それが顧客満足度を上げていくことにつながります。
(10)付加価値を提供する
サービスそのものの面で言えば、「付加価値を提供する」ことも効果的です。
要するに、「通常はここまでだけど、これもやってあげたら喜んで貰えるだろうから、プラスアルファでやろう」という感じです。
自己啓発の分野で有名な書籍『思考は現実化する』の中でも、「プラスアルファの努力」ということが書かれています。
期待を超えるサービスを提供することで、顧客満足度は高まります。
顧客満足度の向上させるための、下準備×4
さて、ここまでで、顧客満足度を向上させるための心がけ(方法)を、紹介してきました。
これらを実践するには、以下のような下準備を行っておくと、より実践しやすくなります。
(1)相手の喜びポイントを探る
人によって、喜ぶポイントは違います。
なので、目の前のお客様が、何に喜ぶのか?という「喜びポイント」を探ることが大事です。
と言っても、やり方は簡単です。
例えば、「いつも早く仕上げてくれて助かります」と言ってくれるお客様がいるとしましょう。
この人は、ずばり、「仕事が仕上がるスピード」に喜びポイントがあります。
なので、その人からの依頼には、少し早めに対応する、などすると、顧客満足度がどんどん上がっていきます。
(2)雑談にこそ注目する
先ほど、「お客様が大切にしているものを理解する」「小さなことでも忘れない」というポイントがありましたよね。
こういった話は、雑談の中に、そのヒントがたくさん埋もれています。
雑談の中で、「もうすぐ子どもが産まれるんです」や「趣味で登山をやっていまして」のような話が出てきたら、それをメモしておきましょう。
こういったちょっとした心がけが、顧客満足度の向上につながります。
(3)アンケートを使う
先ほど、「事前期待を超える」という話を出しました。
この事前期待を知るためには、アンケートを使うのが最も簡単です。
サービス申し込み時などに、以下のようなアンケート項目を含めた、お客様アンケートを書いてもらえばいいのです。
- 当事務所に相談に来る前、どんな悩みを抱えていましたか?
- 当事務所に期待していることは何ですか?
ここに書かれた内容は、お客様の事前期待とも言えるものです。
この事前期待を満たし、超えられるようにすればいい、ということです。
(4)フェイスブックを見る
Facebookを見ると、お客様の興味関心や近況が分かります。
お客様に会う前に、最近の投稿をサラッと見ておけば、「この前、海外旅行されてたんですね」のように話題をふれますよね。
また、プロフィール覧に趣味や興味、出身校などを書いている人もいるので、こちらも見ておくと良いでしょう。
例えば、出身校が同じなら、その話題を出せますよね。
このように、事前に下準備しておくことで、顧客満足度を上げるヒントをつかめるのです。
まとめ。「先に与える」が、顧客満足度の向上につながる
いかがでしたでしょうか?
顧客満足度向上には、「先に与える」という意識がとても大事です。
私が尊敬している経営者さんも、「Give、Give、Give、Give、Give、Give、たまにTake」と言っている方がいますが、まさにその通りだと感じています。
お客様に興味を持ちましょう。
その人に、先に与えましょう。
その人から直接返ってこなくても、巡り巡って、あなたのもとにちゃんと返ってきます。
ITや人工知能にはできない、人の心をつかむ部分です。
ぜひ、実践してみてくださいね。
編集後記
このページの最初にご紹介した、スタバのスタッフさんにいただいたメッセージカードを、ここでご紹介させていただきます。
こういった、人のつながりや温かみが感じられる対応は、とても嬉しいですよね。
今回、この顧客満足度の記事を書こうと思ったのも、このスタバの皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます。
異業種の事例こそ、顧客満足度を上げる参考になる
なお、今回はスターバックスでの私の体験をご紹介しましたが、こういった”異業種のサービス事例”というのは、自分の仕事に大いに活かせます。
なぜなら、「とある業界では当たり前のことなのに、自分の業界ではまだ誰もやっていない」というものが数多くあるからです。
あなたの身の回りにある、「異業種の事例で、自分で使えそうなもの」は、どういったものがあるでしょうか?
ビジネス脳を鍛える、という意味でも、ぜひ考えてみて下さい。
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